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デジタルとアナログが交差する瞬間 -グラフィックデザイナー 河村康輔- 後編

漫画「キングダム」とのコラボレーションアイテムも絶賛販売中である、グラフィックデザイナー 河村康輔氏。数々の作品が生まれたであろう、アートブックやフィギュアたちがうず高く積まれつつも、不思議と何か包まれている感覚にとらわれる彼のアトリエにて話を伺った。後編となる今回は、制作の裏話や手法について。

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多分日本一シュレッダーを使っている気がしますね

インタビュー前編でお伺いした現在の制作手法ですが、狙わずして短冊状に出てきてしまうシュレッダーはずっと同じものを使い続けているんですか?

そうですね。今は海外のやつであればあるんですけど、僕が使っているものは生産中止されているものです。確か、個人情報保護法が変わったタイミングで、短冊状で出てくると、何枚かあれば情報が復元できてしまうので、それをクロスカッターというカット方法が推奨されるようになったんです。そういう指令が各メーカーに伝えられたのか、これはもうシュレッダーをとことん突き詰められるなと思った時に、メーカーに問い合わせたらもう在庫はないし、法律的に規制に触れるので壊れた時の修理ができないと言われたんです。

これはヤバいってなってヤフオクで探しまくってるんですけど、くじ引きですよね(笑)。出品しているのが主婦の方だったりするので、状態が微妙だったりして。大体1,000円〜2,000円なんで、状態が悪いからといってクレームつけて送料払って返品してもどうしようもないというか。見つけては買ってっていう家庭のゴミ処理班をやっていた時期がありましたね(笑)。多分日本一シュレッダーを使っている気がしますね。

―仕事道具でもあるシュレッダーはなくなったら困る存在ですよね。メンテナンスはできないものなんでしょうか?

BRAHMANのTOSHI-LOWさんと話をしてる時に、「康輔さ、シュレッダーって切れなくなったりしないの?知り合いになんでも直せるやつがいるから渡してみる?」って話になって、試しに切れなくて使えないものを出してみることにしたんです。その人が本当にすごいらしくてTOSHI-LOWさんは“博士”って呼んでるんですけど、完全に切れるように直してくれたんですよ。

―それはすごいですね。

シュレッダーって紙を切るものだから、シュレッダーの刃を研ぐシートなんかも売ってるんですよ。でも結局そのシートって紙が重なっているもので、真ん中の層に鉄の研磨剤がプレスされていて、もう一層に油が染み込んでいて。それをかけた後に紙を通すと全部油が染みちゃうんですよ。普通の使い方だったら問題ないんですけど、僕にとっては致命的なので。油だから乾かないし無理だと思いますよって話を博士に伝えてもらったんですけど、油も染み込まない完璧な状態で戻ってきたんです。本当に救世主現るみたいな感じで、当分はシュレッダーに困らないでいけるかなと思っています。

計算できない不確定性の強いものをいかに1枚の作品として成立させるか

―なぜシュレッダーを使う手法にこだわっているのでしょうか。

今だとカットしている人ってたまに見るんですよ。昨日なんか知り合いに「これ河村くんがやった仕事なの?」って見せられたものがあって、僕がやってないものだったんですけど、見たらカッターで切ってるやつで。なんでわざわざシュレッダーを使っているかというと、人のコントロールが効かないからなんですよ。斜めに紙が入っていったり思うようにいかないんですよ。ここだけ欲しいってなった場合、手作業でカッターで切ればすぐできるんですけど、シュレッダーだと欲しい部分がカットされるかどうかはやってみないとわからないんです。意図せずにカットされてシュレッダーから出てきたものを、人間の手でコントロールして組み立てると、そこにバグが絶対に生まれるんです。

そういう計算できない不確定性の強いものをいかに1枚の作品として成立させるかという作業を突き詰めているので、やっぱりそこの違いがあるというか、似たような感じでやる人が出てきてもなんとも思わないですね。デジタルでやれば早いじゃんって言われるんですけど、デジタルだとできない部分があるというか。

―捨てる行為を見せる行為にするのは面白いですよね。スクラップ&ビルドというか。

自分のコンセプトはそこにあるんですよね。今はメッセージ性のあるものとしてモンローを使ってみたりはしましたけど。元々のコンセプトとしては、誰も見向きもしなかった40〜50年代の雑誌広告などから素材を持ってくるということをしていて。その理由もスクラップ&ビルドというか。当時はその広告を見てものを買った人たちがいたとは思うんですけど、何十年も経った今はよっぽど特殊な人じゃないと目も向けないので、その時点で捨てられたものではあるので。

計算できない不確定性の強いものをいかに1枚の作品として成立させるか

―ご自身の制作活動と並行してクライアントワークも意欲的にされていますよね。

不思議というか、グラフィックデザインというものが20年間変わらずに自分の中にあるので、これまでもクライアントワークと並行して展示も開催しています。どうしても嫌だってものはお断りさせていただいているんですけど、基本的にクライアントワークは話を頂いたものは全部やってみたいとは思っているんです。色々制約がある中でやっていくと次の作品に生かせたりするんです。だからクライアントワーク全ての過程が自分の作品を作る時のアイデアだったりの糧になっていると感じています。

なのでクライアントワークを嫌と思ったこともないので一生やっていきますし、プロフィールにアートディレクターとかグラフィックデザイナーって書いています。作品だけでも食べていけるんですけど、それを書いているのは仕事が欲しいからというよりは、自分はあくまでグラフィックデザイナーと思っていて。アートも買ってくれる人がいるので、自分はアーティストでもあるんだっていう気持ちはここ数年で思えるようになりました。

―話を聞いていると河村さんのしていることは本当に音楽ですね。サンプリングしたものをMPCで組み上げて全く別の音楽を生み出すというか。

本当そうですね。サンプリングもミックスでも、押すタイミングで別の曲として成立させられるじゃないですか。それと同じですよね。グラフィック脳なので、リミックスできるんですよ。10年前に作品として発表したものをベースに全然違うアプローチでグラフィックを加えたりだったり。自分的にもやっていて飽きないんですよね。

河村康輔

1979年広島県生。東京在住。コラージュ・アーティスト、グラフィック・デザイナー。
ERECT Magazineアートディレクター。

06年、根本敬氏個展『根本敬ほか/入選!ほがらかな毎日』入選。様々なライブ、イベント等のフライヤーを手掛ける。雑誌 EYESCRAEM、WEB Designing、TRASH-UP!(根本敬氏と共作で実験アート漫画)を連載中。美術館、ギャラリー等で個展、グループ展に参加。サンフランシスコでの個展「TOKYO POP!!」を開催する。Winston Smithとのコラボレーション作品集「22Idols」、単独作品集「2ND」を刊行。
2011年よりイベント、フェスにて様々なミュージシャンとコラボレーションでライブコラージュを行う。
2012年、スイスのローザンヌで開催されているフェスティバル「LUFF」にて個展を開催。