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Ken Kagamiが追い求める、真摯で日常的なくだらなさの世界。-後編-

1919年生まれの黒猫・フィリックスは、2019年の100歳の誕生日をこんな風に迎えるなんて、想像もしなかっただろう。フィリックス生誕100周年を記念して、さまざまなアーティストとのコラボレーションアイテムが制作され、彼はいくつもの新しい表情を見せてくれた。フィリックスとアーティスト、それぞれの”らしさ”が際立つ素晴らしいコラボレーションを手がけたKen Kagamiは、アーティストとして、フィリックスに理想の姿を重ねるという。今回の企画の話をスタート地点に、うんこの話、アートについて、宇多田ヒカル…といったいくつものトピックを経由しながら、いろんなことにがんじがらめの2020年において重要な「真摯なくだらなさ」へとたどり着いた。ここにその対話を記録する。(後編)

 

最初から牙を剥いていくっていう。口に出したりはしないんですけれど

ー加賀美さんは、さまざまなブランドとコラボレーションをしていますよね。率直に聞いてしまうのですが、飽きたりはしませんか?

まだ飽きてないですよ。自分が飽きないようにやってます。海外で自分の展覧会をやるときは、100%自分の中で完結するわけだけど、コラボレーションには多少なりとも縛りがあって、その中でいかに面白くできるかって考えます。流れ作業でやったら面白くないから、楽しむようにしてますよ。

ー楽しむ姿勢を持つのって、当たり前のようで、すごく重要なことですよね。

そうですね。たとえばお酒を飲んで酔っ払って暴れたり、ワールドカップで騒いだりするのって、日々の生活の中に楽しいことが見出せず、抑圧されてる感情がボンって破裂しているからなのかも。

ー加賀美さんは常に楽しんで生活している印象です。

でも、僕が朝からinstagramに連投してるのを見て、ムカつく人もいると思うんですよ。「こっちは朝から会社なのに、ワケわかんないもの上げてふざけんなよ」みたいな。そういう感想を持つのももちろん自由だけど、僕のインスタを見て、「会社の休憩時間に見て癒されてます」って言う人もいて、それで癒されるんだったら安上がりだしいいよね。「加賀美さんってバカだなーくだらないなー、よし頑張ろう!」みたいな。それはそれでいいこと。僕は誰かを癒やそうっていうつもりは全くないけれど。

ーそこにあるものを違う目線で見て、一人でニヤニヤ面白がるって、エコというか効率のいい工夫ですよね。

アートってそういうものだと思っています。他の人が「いいよね」「これ高く売れたんだよ」って言っていたとして、「こんなのが高く売れてんの!?」っていう意見が出てくるほうがいい。そこに発見があったりするんですよ、何でも。

ー世の中的に良しとされているものをすぐに飲み込むわけじゃない、という。

もう最初から牙を剥いていくっていう。口に出したりはしないんですけれど、自分の頭の中でそういう感じで見てみる。

ー牙を剥かないと、人間って意外と単純に動いちゃったりしますからね。

そうそう。自分がいいと思う感覚に芯を持つというか。アートってそれが如実に現れる世界だから。

ー面白さも人に教えてもらわないとわからない、っていう人が意外と多いじゃないですか。

インスタにも「これどこが面白いんですか?」とかコメントがあったりして、「これはこうだから笑うところはここですよ」って説明するのは面白くないですよね。僕は説明がないものが好きで。この前マツコデラックスの番組に宇多田ヒカルが出ていて、外に落ちてるものをインスタに上げてることについて説明していて、もったいないなーって見てました。「このゴミはどこから来たんだ?これは何なんだろう、私に見られてるゴミって?」みたいな。「私がステージに立って何万人の前で見られてる感覚と似ている。ゴミの気持ちがわかる」とか。そんな余計なこと、言わない方がいいのに!って奥さんに言ったら、それじゃテレビは成り立たないよ!って言われて。まあそれは分かってるんだけどさ。もったいないなー。

ー加賀美さんだけに限らず、インタビューって不思議な行為だと思うんですよ。作品を見て判断したらいいし、解釈は自由なのに、インタビューは必要な情報なのか?とよく悩みます。その人のこと自体を知りたいという思いや、解釈を助けるための対話は必要なんですけどね。

ああ、そうですね。たしかに。作品を語ってる人ってすごいなって思いますよ。現代美術はちゃんと批評できないとダメで、社会とリンクさせていかないといけないけれど、僕は何かあったら説明したらいいやみたいな。聞かれた時に考えればいいやって。

ー現代美術は文脈が必要ですよね。文脈があるから価値がつくという。

そうそう。でも、1秒で出来た作品で、説明ができなくても面白いものはあるし、やばいものは見てやばいって感じたらいい。それに対して加賀美さん何でやばいって思ったの?って聞かれてもね。やばいじゃん見てみてよ、って思います。違うところ見ていたりするのも、それは面白いし。

ー加賀美さんの投稿しているリアル目なうんこは、結構やばいですよね。ちょっと気持ち悪いんですけど、それが面白いというか。

でもカレー食べてるときにああいうの上がってきちゃったら、嫌だよね。あれでフォロー解除してる人もいっぱいいると思うんですよ。

ー僕も外しかけたこと、あります(笑)。

でも本物のうんこは絶対にあげないでしょ?本物のうんこはだめなんですよ。おもちゃが好きなので。

フィリックスみたいな位置が一番いい

ーSNSって、いろいろな環境を変えていると思うんです。これからアートの価値も変わりそうだなって。

これからはどうやって価値をつけるんだろうね。フォロワー数とか、色んなところコラボレーションしてるとか、有名な人と友達とか?昔もそんなのあったけど、今はもっとすごいよね。フェイクがどんどん出てくるんじゃない?なんか合成で作っちゃったりして。

ー実際にそういうことも起きてますね。

モデルルームで写真撮って、引っ越しました。とか言ってもわかんないですもんね。それだけやってる人がいたら逆に面白いけどね(笑)フォローしちゃう。

ー特別なアートには、どこに線があるのかすごく気になります。それこそ言葉にしづらいことだと思うのですが。

わからないけど、続けることじゃないですか?続けると、面白がって声をかけてくれる人が見つかって、それを見てくれた人が声かけてきて…。そこで気をつけなきゃいけないのは、広がり過ぎちゃうことかな。自分じゃどうにもできないこともあるけれど、いろんな表現方法を持っておくのがいい。

ーたしかに、流行することで終わりは見えてきますね。

日本だと流行するといろんなところで一気に使われて、また新しい人が出てきて入れ替わって…ってなる。難しいですよね。「あ、また見た!」「これもこの人なんだ。」「こんなのもやるんだ!」って思ってもらえれば、多少は長生きできるのかなって。これが飽きられたらもう一個あるわ、ってぐらいに考えておいたほうがいい。自分は揺さぶりをかける感覚でやってるんですよ。字も書くしイラストも描くけど、海外で展示やパフォーマンスもやるし、現代美術もやるし。はたから見ると何やってるんだかよくわかんないかもしれないけど、自分の中では統一しています。

ー何者かわからないくらいがちょうどいい、と。

自分がやっててつまんねーなって思っちゃったら危険信号っていうかね。自分が自分に飽きちゃったらもうダメですよ。最初の話に戻るけど、フィリックスみたいな位置が一番いいと思います。

 

 

Felix the Cat ©2020 DreamWorks Animation LLC. All Rights Reserved.

 

Text_Taiyo Nagashima

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